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書籍情報
発行年月日:2014/10/20
ページ数:216
ISBN:978-4-06-257885-1
定価(税抜):860円
内容
「山はどうしてできるのか」「海はどうしてできたのか」に続く「地球に強くなる三部作」完結編!
黄河、アマゾン川から多摩川、天竜川まで――いままでになかった「推理小説のような」川の本!
地球上には無数の川が存在しています。最初は同じ雨水なのにその姿は千差万別で、ときに人間には信じられないふるまいを見せます。
川の面白さは、家で地形図を広げて眺めているだけで、「なぜこんな姿をしているんだ?」という謎が次々に浮かんでくるところにあります。
標高数千メートルのヒマラヤ山脈を越える川、砂漠でいきなり洪水を起こす川、黄河・揚子江・メコン川の不思議な流路、平地より高く流れる川、ほかの川の流れを奪う川……まるで魔術のような数々の現象は、なぜ起こるのでしょうか?
第1部では「地形の名探偵」とともに、これら川のマジックの謎解きに挑んでいただきます。
また、一つの川の流れには、いくつものドラマチックな物語があります。第2部では、川の「運命」を大きく分ける分水嶺にはじまり、上流・中流・下流それぞれに秘めた川という地形の正体を、最もポピュラーな川の一つ、多摩川を下りながら見ていきます。
プレートテクトニクスとの密接な関係から、その意外な「終着駅」まで、大きなスケールで多摩川をとらえなおします。
そして第3部では、著者が地形図をにらみながら独特の推理を働かせて、川の定説に大胆に挑みます。なかでも圧巻は、「天竜川の源流は諏訪湖」という常識への挑戦です。想像の翼を広げた仮説が指し示す、驚きの「源流」とは?
時空を超えた、壮大な地形のミステリーツアーをぜひ体験してください。
書評
藤岡換太郎氏による、「山」と「海」に続く3部作、「川」が登場した。
これらを、「どうして」シリーズと呼ぶべきか、「できるのか(できたのか)」シリーズと呼ぶべきか?
著者は、「できる」と、「できた」を、微妙に使い分けている。山や川は、現に出来つつあるものや、失われつつあるものもある。それに対して、海は、地球の誕生間もない頃から、既に出来ていたからではないか?
海よりも、山よりも、川は、日常生活に最も身近な存在である。小川のせせらぎを聞き、流れ行く水を見て、人生の無常を知る。かつて、川は田畑の灌漑や、水運の経路として、重要な存在であった。しかし、最近の大都市では、邪魔者扱いされ、蓋を被せられたり、その上を高速道路が走っている。東京日本橋が、その典型と云える。
川は、山に源を発し、海に注いでその旅を終える。その川も、迂回する大河、ヒマラヤを越える川、砂漠の洪水等、極めて多くの変化に富む。第1部では、これを13の謎として紹介している。そこには、海底の川や、地球外の川も登場する。
第2部は、多摩川を例に取って、その源流を探り、上流から中流、下流へと順路を辿って、周辺の風物を紹介している。扇状地は、川の堆積作用によって形成されるが、河口だけでなく、山から平野部に至る場所にも存在する。多摩丘陵や、武蔵野台地がそれである。
第3部は、著者の大胆な推論である。地殻変動によって流路が逆転したり、かつては、スーパー大河が存在したと推定している。
本著を含めて、このシリーズは、科学の啓蒙書であるが、読み物として非常に面白い。単なる科学的事実の羅列ではなく、歴史や文学が背景にある。中高理科教育の副読本として、推薦したい。
海、山、川の次は、何であろうか?宇宙か?恐らく、著者は次の構想を練っているに違いない。
平成26年12月8日
海洋理工学会副会長
深海居士 門馬大和